欲しがりはどっち? くちづけ <浦原喜助> きらきら、きらきら。 彼女の唇は、艶やかに輝いて。まるでアタシを試すように。 「……テッサイさん達、遅いね」 「……そっスねぇ」 そわそわ、そわそわ。 彼女はどこか落ち着かない。今日はまだ、アタシと目を合わせない。 いつもは騒がしい駄菓子屋が、物音ひとつしなくて。 折角上がってもらって出した茶に、彼女はまだ口をつけない。 「……喜助さん、て。」 「ハイ?」 「………なんでもない。」 「………は?」 「なんでもない。今日は、帰る」 「帰っちゃうんスか?テッサイ達もうすぐ帰ってくると思いますよ?」 「また後で来る。お邪魔しました。」 ゆらゆら、ゆらゆら。 立ち上がった瞬間に、少しだけ揺れた湯呑みのお茶。 結局彼女は下を向いて、アタシを一度だって目に入れないで。 こんなこと、今までなかった。 「何、言いかけたんスか?」 「え……うわっ!?」 掴んだ手首は細くて、力を入れたら容易く折れてしまう。きっと。 下から見る彼女は、アタシの手を離そうと必死。 可愛くて、可愛くて。 「ねぇ、何を言おうとしたんスか?」 力任せに引っ張れば、すんなりと彼女はこの腕のなかに落ちてくる。 かすかに感じる心臓のリズムは、小鳥のように早い。 「……夜一さんと、どんな関係か聞きたかっただけ」 それこそ、まるで小鳥のように。小さく小さく囀るように彼女は可愛らしい声で訴える。 普段、これ以上ないくらいのアタシの愛情表現を恋人は全く分かってないらしい。 それはもしかして、アタシにさえ分からないうちに抑制された小さいものなのかもしれないけれど。 「…好きっスよ?」 「……ッッ」 二度目の叫びは、声にはさせずに。 唇のなかに閉じ込めた非難の言葉を、正直楽しみながら待っていて。 「友達として、ね。」 「………なんで意地悪ばっかするの?」 そうやってアタシを睨み付ける目さえも、愛おしくて。 「好きだからっスよ。」 「……ワケわかんない」 「じゃあ、わかるまでキスしましょうか?」 「………やだ」 「なら、アナタの方が意地悪だ」 逃がさないように堅く結んだ腕の中で、身を捩っては無駄な努力を繰り返す彼女。 少し赤くなった耳に内心笑いながら、腕を緩めるなんてせずにじわじわと顔を近付ける自分。 重ねた分だけ少し薄くなった唇の輝きを見つめながら。 アタシを睨み付ける恋人に、ゆっくりゆっくり顔を寄せて。 諦めて目を伏せるその姿まで、この目に閉じ込めて。 きらきら輝く麻薬のような唇に、今はただ落ちていく。 くちづけ ねぇ、もう一度だけ。 END... 2006*10-08 吟 もう、わけわかめ。笑 喜助さん大好きだお! 気持ちだけで駆け抜けたお(゚e゚) お礼小説は、ランダムで4つあります!拍手ありがとうございましたヽ(゚∀゚)ノ |
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