旅の途中、とある街。 その雑踏の中で、激しい喧嘩を繰り広げる少年少女が一組。 そして、それを取り巻く人、人、人。 やじうま根性ここに極まれり、と普通なら思うところだろうが、実際はそうではない。 二人の剣幕があまりにも凄まじく、怖くて通行する事ができずに困っているのである。 片や、黒髪黒装束に身を包んだ、どこにでもいそうなフツーの少年。 片や、ロングの水色がかった銀髪をストレートにした美少女。 彼らは、いつもならば絶対にしないような大声でお互いを罵り合っていた。 地球からの来訪者 番外編 『喧嘩』 「君の意見が正しいってんなら、俺も聞くさ。だけどこれは完全にメアリィのワガママだろーが!!」 「それを言うならマサユキだってそうでしょう!! 自分のコト棚に上げるなんてサイテーよ」 「なっ!? ってか、そもそも先に言い出したのは俺だ!!」 「なぁに、地球では何が何でも、最初に発言した人の優先度が高いって言うの? 大した早い者勝ちの世界みたいね」 「ッ!!」 そう、言い争っているのは、灯台が灯るのを阻止しようとしているパーティのメンバーであるマサユキとメアリィ。 いつもは大変仲がいい二人であり、口論などしたことはほとんど無い。 少なくとも、彼らの仲間達がそれを目撃したことは一度も無い。 そもそも、二人はそれなりに理知的な部類に入るので、お互いにキツい言い方はしない傾向がある(敵以外に対しては)。 二人の仲の良さも考慮すれば、現在の状況は非常に珍しいことだと言っていい。 ギャラリーの数が段々増えていくのにも気付かず、不毛な争いは続いてゆく。 果たして、何が彼らをここまで駆り立てたというのか。 今後の旅の進路? 物資の補給問題? お金の配分? 戦闘における役割? いずれにしても、『あの二人』が天下の往来で大喧嘩をしているくらいなのだから、 きっと非常に重大な問題であるに違いない。 それこそ、彼らの大切な旅の行く末を左右するような…… 「はいっ、そこまで!!」 そんな空気を破って仲裁に入った勇者は、我らが英雄ロビンだ。 とはいっても、パーティ・リーダーとしての立場上、嫌々ながらにやっていることだが。 (ジェラルドとイワンが無理矢理押し付けた、と読み替えていただくと幸いだ) 「ロビン、邪魔しないで下さい。私達は今、大事な話をしているのです」 「そうだ、これは俺達の問題だ。お前には関係ない」 「そうもいかないだろ。ここはこの街の大通りだ。通行人の人達が迷惑してるだろ! いくら君達でも、やっていいことと悪いことがある!」 完全に戦闘モードの口調で、彼はそう言った。 目がかなり据わっており、常人ならまず間違いなくビビるところだ。 といっても、実際はロビンの方がビビっているだけで、戦闘モードは不安を隠すためのただの仮面に過ぎないのだが。 勇気を出して止めようとしても全く衰えを見せない険悪な雰囲気に、彼は盛大に溜息をついた。 「全く、君達が喧嘩なんて。一体どうしたんだよ? 普段はあんなに仲が良いっていうのに」 そんな彼を、二人はキッっと睨み付ける。 そして、叫んだ。 「俺はカレーが食べたいって言ったんだ!!」 「私はパスタが食べたいと言ったのですわ!!」 「・・・…君らはトウモロコシでも食ってな」 |
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