――――その日は、衝撃から始まった。 【Cosa era là?】 現在、2時間目と3時間目の間の休憩時間。生徒の表情は様々だがちらほら教室を出て行くという行動は一律だ。そんな様子を見て教科書などを準備した山本が嬉しそうに言う。 「次実験だな♪」 「あっ、忘れてた。教科書とノートとペンポーチ…っと」 山本の言葉に後押しされ、慌てて用意をする綱吉。そして……。 「貸せよ」 そんな綱吉に仏頂な表情で手を差し出して「オレが持つから」と言うのは、獄寺だ。 「え、いいよ毎回毎回。そんな重くないし」 「いいから貸せって」 そうやって、半ば無理矢理に綱吉の荷物を持って「ほら、行くぞ」と先に歩き出す。その光景は朝から続いていて、クラスメイトの女子も今日は獄寺を遠巻きに見ているだけだ。いつも言い寄られている本人は今日は過ごしやすそうではあるが。 「いいって言ってるのに」 追いついて、声をかけるように小さな抗議をすると「いつもやってるからやらねぇと調子狂うんだよ」と無愛想に言う。 「獄寺本当面白ぇよな~♪」 色々といつも通りじゃないのに、一番近くに居る綱吉や山本がいつも通りなので周囲は余計に混乱して皆怪訝な表情を浮かべる羽目になっている。 「獄寺君、何で今日はいつもと違うんだろうね」 「さぁ?でも獄寺たまにすげぇ面白いこといきなりやるしな♪」 「アンタ知らなかったの?!」 花が驚くのも無理は無い。だが知らないままにすぐ順応できるのは、やはり山本の良さだろう。 「オレがいつそんなことしたよ」 「後で理由教えてな?」 「気が向いたらな。授業まであと2分しかねぇぞ」 「あ、本当だ、走ろう!」 そう言って五人は走り出した。 「日誌持って行ってくるから、靴箱の近くで待ってて」 そう言った綱吉と京子を見送った後、山本たちは指定の場所で靴を履き替えて待っている。 「…………違和感」 「だよなー」 けらけらと笑う山本と訝しげな花の視線の先――――そこに居たのは獄寺だ。いつもなら食い下がった後、ついて行けなかったことにショックを受けながら待つのが常なのだが、今の獄寺は平然と靴箱に凭れ掛かっている。 「おい、さっきから人のこと見すぎだぞ」 「だって。ねぇ?」 「何で今日そんななんだよ」 そういや、ツナん家の前で会った時からそうだったよな。と山本は今日一日を振り返ってみてようやく思い出した。 「口悪ぃのにやることカッコイイって、何か反則っぽいぞ」 「褒めてんのか喧嘩売ってんのかどっちだ、てめぇ」 睨み付けた後その目を下駄箱の奥にある廊下に遣る獄寺は、山本の質問に答えることは無い。「気が向いたら教えてやる」と言ったことをまるで忘れているかのようだ。そこへ、 「皆、お待たせー!」 「ごめんね、遅くなっちゃった!」 「おー、お帰り、二人とも」 綱吉と京子が戻ってきた。待っている三人を見て慌てて靴を履き替え近くに寄ると、獄寺は保ったままの無愛想な顔で綱吉の右側を歩く。鞄を持たない左手は、いとも簡単に綱吉の右手を握った。予測もしない出来事に、綱吉がうろたえて顔を赤くする。 「ちょっ、何してんの!」 「あ?いいだろ別に、減るもんじゃねーし。オレ今日一日疲れたんだよ、これでも割りに合ってねぇ」 「うそだぁ!」 喚く綱吉の耳元で「騒ぐと皆がこっち見るぞ」と囁けば、瞬時に大人しくなる。 「……やっぱりやめときゃよかったかも」 「だからオレは最初に無理だっつったのに」 「ううう……」 「ねぇ、獄寺ぁ。アンタ何で今日はそうなの」 「んー?」 言わねぇ。答えとして続いたのは、そういう言葉だった。 「あはは、獄寺意地悪なのなー」 「意地悪ていうか面倒くさいというか」 「獄寺君、面白いね♪」 「全部聞こえてんぞ。まぁ、週明けっつか明日には戻ってるけどな」 な?綱吉。 !……っ意地悪! どういたしまして。全力でお願いを叶えてやってるだけだぜ、オレは。 『誕生日プレゼント、何がいいですか?』 『そうだなぁ……あ、じゃあ、10月14日は名前呼び捨て+敬語無し。とか!』 そう綱吉が言った結果が今日である。綱吉の家への帰り道。お互い満身創痍といった感じだ。 「すっごい後悔してる」 「オレは一日こうしてたおかげで知恵熱出そうだぜ。出たら責任取れよな」 「……わかった」 10月15日に変わるまで、あと7時間ほど。 † † † † † † † † † † ツナ誕! お読みくださりありがとうございます! 優希 良 拝 |
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