アスキラ【神鳴り】

「きらぁ〜?」

村のほうから自分を呼ぶ声がする
気づけばずいぶんと暗くなっていた
最近村の周辺に鬼が出るという
今のところ村人に怪我人は出ていないが
それはただの鬼の気まぐれだとみんなが言っていた

「じゃあ僕帰るね」

きらは目の前に座っている少年に別れを告げ、呼ばれているほうへ走っていった

「またね、きら」

少年は誰に聞かせるわけでもなく、ぼそりと呟いた
漆黒の髪はボサボサに伸び、顔を隠した少年はきらの姿が見えなくなるまで、そこに立っていた



「おかあさん!!」

「きらっ!まったく、どこにいたの?」

「うらのお山だよ!」

あちこちに泥をつけた顔にきらは満面の笑みを浮かべた

「裏山!?あそこは鬼が出るから入ってはいけないと言ったでしょう!?」

「でもね、入り口までだよ!」

「入り口まででも駄目です。もう近づいちゃだめよ?」

「……はぁ〜い」

きらはふてくされつつも、同意の返事をした
しかし、頭の中では明日も行こう、と思っていた
不意にきらは振り返った

「……またね、アスラン」

「どうしたの?きら」

「なんでもないよ!」

誰も知らないところで歯車は回りだした
クルクルクルクル
規則正しく回り始めた


【続く】



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