銀魂【銀八&神楽&新八】

*サイト内桃色時代設定です。


「銀ちゃん先生大好きヨ」


瓶底ぐるぐる眼鏡をかけた留学生は、嬉しげに薄汚れた白衣に包まれた腕にしがみ付いた。
桃色の前髪がふわりと揺れ、少しだけ眼鏡がずれる。
見えた瞳は綺麗な蒼。
新八が知る凡その色の何より綺麗なそれは、長い睫毛に縁取られていた。

ぱちり、と一つ瞬きし、日に焼けない白い指が元の位置に戻す。
そうすれば毒舌鋭い変わり者の留学生が現れて、絶世の美少女は姿を消す。

もしかすると、あれは魔法の一つなのかもしれない。
馬鹿みたいな考えだけれど、そんな想いが浮かぶのは、今だって眼鏡がずれた少女を庇うように進み出た体があるから。

れろれろキャンディを口いっぱいに頬張る死んだ魚の目をした男は、無関心な態度で神楽の額をぴんと弾く。


「こら、神楽。お前学校ではあれほど眼鏡を外さないようにしろって言ってるだろうが。学校は若い獣の巣窟だぞ」
「違うネ、銀ちゃん。外したんじゃないアル。ずれただけヨ」
「銀ちゃんも学校じゃ禁止。どっちも同じようなもんだろ」
「けど」
「文句はなしだ。ちゃんと気をつけれたら、今度焼肉食い放題に連れていってやる」
「本当アルか!?私ちゃんと気を付けるネ!銀ちゃん先生の言うこと聞くアル」
「よーし、いい子だ」


にっと笑った銀八は、そうするのが当たり前なようにくしゃりと触り心地の良さそうな髪を撫でた。
新八は彼らの関係を知る───と言っても保護者・被保護者と言う色気のない関係だが───数少ない存在である。
銀八の都合が悪い時に彼女の面倒を姉と一緒に見ることもあるし、彼らの家に遊びに行ったりもする親しい間柄だ。
それでも神楽が髪を気軽に触れさせる異性は銀八以外はおらず、不思議なくらい彼に懐いていた。
意外と面倒見のいい銀八も何だかんだで神楽の面倒をまめに見て、本当に親子みたいだ。

けど、それでも。
時折違和感を感じたりする。


「あ、新八」
「おはよう、神楽ちゃん」


漸く新八の存在を認めた神楽が新八に笑いかける。
それは銀八に向けられたもののようにあけすけな笑顔ではないけれど、彼女にしては十分に親しみを篭めたもので、新八も微笑み返した。
しかしその間も首を刺すようなちりちりした感覚を覚え、情けなく眉尻を下げる。
視線だけで窺えば、れろれろキャンディーを無気力に舐めた銀八がこちらを眺めていた。


「何?」
「いえ、何でもありません」


先ほど感じた強い視線は勘違いだったのかと思えるくらい、いつもどおりの彼に嘆息する。
神楽に関わるとき、時折感じる殺気は無意識に発しているらしい。
怖いけれど、それでも神楽と関わるのは止めれないので、最近は銀八の視線が新八の悩みの種だったりする。
せめて彼の視線の意味が理解できれば、何か改善しようもあるのに。



どうしてなのか、誰か教えて


Web拍手、ありがとうございました。







ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
お名前
メッセージ
あと1000文字。お名前は未記入可。