生きる糧になります・・っ!!(号泣)
コメントは、日記にて返させて頂きます!!










森林浴なんて、なんつーしょぼいもんやってんだ、それが素直な感想だった。
何でも、コムイの馬鹿に吹き込まれたとか。
身体にいいからとか、気分転換になるからとか、そんなくだらない理由で、あいつはそれを馬鹿正直に実行したらしい。
コムイもコムイだ。何でよりにもよって森林浴なんだ。
もっと他に選択肢があるだろう。
これだから部屋に閉じ籠りきりのインテリ眼鏡供は使えねぇんだ。





綿





踏み締める落葉や枯枝は、体重をかける度にぱきぱきと軋みを上げた。
教団本部を取り囲む森林は実に広大で、この中から人一人を見つけ出すなんて事、まず不可能だった。
木々の間をすり抜けて差し込む日光が、肌にやんわりと当たって心地いい。
吸い込む空気は澄みきっていて、呼吸をする度に肺が清浄されるようだった。
神田はついと、視線を上げた。
「おい、ティム。」
静寂が包む空間を震わせたのは、美しい美声だった。
その声に刺激され、数羽の鳥が荒々しく空に飛び立った。




神田の眼前でぱたぱたと羽をはためかせるのは、黄色のゴーレムであって、
唯一の道先案内人でもあった。神田は訝しげに眉をひそめた。
「本当にこっちであってるのか?」





疑問を投げ掛けられ、金色のゴーレムことティムは、空中で静止した。
そして首だけをこくこくと上下させる。神田は溜め息をついた。
森に行くことはいい、森林浴だかなんだか知らないが、勝手にやってくれ。
だがそれが元で任務の召集に遅れるなど言語道断。
全く、何で俺があいつの面倒を見なきゃならないんだと、内心で毒づいた。
ラビにでも押しつければよかった。





ティムに導かれるまま、さらに森の奥へと進んでいった。
するとある場所を境に、一気に視界が開けた。
見えるのは、辺り一面を覆う綿景色。
ふわふわとした柔らかな胞子が、時折吹き付ける微風にあおられ空中に飛散し揺らめいている。
何とも、幻想的な光景だった。




「タンポポの種か。」
本来黄色く色付いていたはずの花びらは散り、今は真っ白な綿毛となって胞子を飛ばしている春の花。
神田はタンポポ畑の中心部に目をやった。
ふんと、鼻を鳴して腰に手をあてる。
やっぱりいやがった。





ティムが、ぱたぱたと主の元に急ぐ。胞子の絨毯の上に寝転がっているのは、
お目当ての探し人、アレン・ウォーカー。
いい気なもんだなと小声で呟きながら、神田は足を進めた。
一歩踏み締めるごとに、綿毛が宙を舞う。
肌に触れれば妙にくすぐったい、よくこんな場所で…。
「寝られるもんだな。」





大の字になってぐーすか寝こけるアレンの顔を、真上から覗き込む。
くーくーと寝息を立てて、呑気にものだ。
その寝顔には、何時もの鋭さはなく、ただ純粋に、眠りに溺れているだけのようだった。
他人がこれほど近くにいるというのに、気付きもしないなんて。





「やっぱテメェはもやしだ。」
片膝を折って、ふわふわの綿毛に手をついて、身を屈める。
口付けた頬は柔らかくて、周囲を覆い尽くす綿のように白かった。
ちゅ…と音を立てて、唇を離す。
やっぱり起きない。まぁ、そっちの方が楽でいい。




ティムが神田の頭の上に下り立ち、さも当然の如く陣取る。
神田はふぅと息を吐いて、アレンの傍らに腰を降ろした。
たまにはいいか、そう己にいい聞かせて、空中を舞う綿毛を一つ、掴み取った。



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久しぶりに書いた神アレ!!
季節外れだけど、タンポポの綿毛っていいですよね!!(笑)
ふわふわもさもさ。ティムはぷくぷくのイメージ。(笑)




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