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>>JiroAKUTAGAWA * WakashiHIYOSHI

ぽい
「何やってんですか」
「ん?」
ぽいぽい
「……」
「おれ昔っからこいつキライなんだよな」
日吉の皿には元あった量の倍になった赤い山。
ジローの皿にはレタスとキュウリ、タマネギにドレッシング。妙に色が薄い。
向かい合ったファミリーレストランのテーブル。時間帯のためかファミリーよりも学生が多い。
日吉の意向でそれぞれ肉の前にしっかり野菜を食べている。それはいい。
問題は日吉の白い皿の、串切りトマトの山である。
元々きれいに盛り付けられてあったのに、適量より若干多めのドレッシングをかけられていた上からぽいぽい放り込まれたものだから、見た目は大分かわいそうになっている。言ってしまえば酷い。
「食べなさい」
「やだ」
「食べなさい」
こういった言葉の応酬ははじめてではなくて、何度も何度も懲りないうちに、 食べながら話していたはずが箸は気づけば2人とも止まっている。
「やだ」
「食べる」
「やだ」
「たべる」
「やだ」
「食え」
「無理」
不毛なやりとりが幾度となく繰り返されて、この応酬から先に脱そうとしたのは日吉だった。
「―――何が嫌なんですか。別にアンタ特に野菜嫌いってわけでもあるまいし」
「野菜のくせに酸っぱい」
酸っぱい、と言ったところで、掻き回したレタスに埋まって隠れていた最後のトマトを当たり前のように他人の皿に放り込んだ。
常識と良識ある学生としては、一生懸命自分を落ち着かせて男たるものクールであろうとしていたわけだが、結局、無駄に終わってしまった。
要はキレた。
「果物だと思え」
「野菜じゃん!」
「意識の問題だ」
「酸っぱいモンは酸っぱい」
「アンタオレンジとか食うでしょう!」
「野菜と一緒にすんな! オレンジに謝れ!」
「だからもう果物だと思って食えっつってんだ!」
「残念でしたー野菜は野菜ですうー」
これの一言によって一気に何となくイライラが増す。こういうタイミングでの間延びした話し方は日吉のような人間の神経を逆撫ですることを人はよく覚えておくといい。
「な、に、が不満だ」
「あと何かぐぢゃってする」
「トマトだけじゃねえだろそれ!」
「なんかキモい!」
「食え!」
「だが断る!」
最初は大人しく説教モードだったがいつのまにやら語気が荒くなってきた。
完全にジローのペースに持っていかれている。
ここまでしてジローにトマトを食べさせる義務も理由も日吉にはないはずなのだが、ここまで来たらもはやただの意地だ。
しかしどちらかの家か部室ならばまだしも今いる場所はファミレスで、それなりに人目もある。
ここは大人になって諦めるか。
チ。
舌打ち。
一呼吸。ひとこきゅう。
「………。……仕方ないですね」
そう考え、(けれどこのままだと負けた気分である、)せめてひとつくらいは捩じ込んででも食わせると決め、自分の皿に山積みにされたトマトを見て、いちばん大きい一片を選んで箸を向けたところで、目の前のジローがいやに大人しいことに気がついた。気がついて、ふと顔を赤から黄色に視線を移す。
こンの顔……、目がす、と細くなる。
何企んでんですか、と口を開こうとした2秒前、ジローが先手を打った。
声は出さずに口だけ動く。
「 ちゅーしてくれたら食べる 」
「しね」
当然と言うかなんと言うか、無声の台詞は低く有声で返された。


(昔は全部食べてくれたのにッ)
(食べさせてるでしょう今も)
(ノルマは解除してくれないじゃん!)
(それくらい食え)
(ちくしょ……最近口移しにも怯んでくんねーし)
(アンタが調子乗るからですよ)
(フツーの時はちゅーもしてくんねーのに!)
 
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