【ありがとう  ディノひば】


強さなんて、もう持っていた。

僕が負けるなんて、万に一つもないと思っていた。

でも、あの男に会って変わった。

はっきりと負けたわけじゃない。

いつもギリギリのところであの男がやめるから。

でも、わかる。

いつも、あと少しで僕が負けるというところでやめるということが。

それが、無性に悔しくて。腹立たしくて。――悲しかった。

がむしゃらになって突っ込んで行って

でも、勝てる兆しなんて見えない。

部下がいなけりゃ、何も出来ないくせに。

それでも、いつも余裕の態度で家庭教師なんて言ってやってくる。

それに、余計僕の闘争心が駆り立てられる。

修行なんてものをしながらあちこちを回った。

並盛に戻ってきたとき、変な奴らがいたけど僕は余裕で勝てただろう。

昔は、わからなかっただろう。勝てたかなんて。

でも、今ならわかる。

僕は確実に強くなった。強かった昔より、さらに。

あの男のおかげなんて思わない。

もともと僕には強くなる素質があったから強くなったんだ。

あの男のおかげなんかじゃない。

だから、修行してくれてありがとうなんて、死んでも言わない―――。


「冷たいなぁ。素直になれって」

「何勝手に人の心の台詞聞いてるの」

「好きなヤツの心の中を知りたいって思うのは普通だろ?」

「・・・・・・咬み殺す」

「えぇっ?!」


ありがとうなんて、思ってても言ってやらないから。


Thank You



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。