じらじらと太陽が煉瓦道を焼いている。木が翳るこのベンチだけは凶悪な陽の光に晒されずに居た。
それでもここは居心地が悪かった。二人の沈黙の間で蝉の声が寝そべっている。


ちらりと隣を見たけれど目は合わなかった。コノヤロウ、一人でコーラなんか飲みやがって。ああ、美濃くんなら私の分も買ってきてくれたんだろうな。良い人だった。優しかった。背はそんなに高くなかったけど、格好良かった。でも、でも、でも、
鼻の奥がつんと痛い。泣くもんか。コイツに泣き顔なんて見せてやらないんだから。
「……優日って」
出し抜けに間の抜けた声。
「あんな良い奴振っちゃうなんてさ。馬鹿だよなぁ」
何を言うこの大馬鹿男が。何にも、知らないくせに。何にも気付いていないくせに。
何でコイツなんだろう。私の何が、コイツを選ばせたんだろう。
私は唇を咬む。俯いて「わ、わた」何か言わねばと「わたし、は」言葉を
「いいよ」
隣の馬鹿男が遮った。手のひらの中で汗をかいたコーラ缶の表面をじっと見てる。
「いいよ。解ってる」
「………」
馬鹿。大馬鹿。あんぽんたん。ろくでなし。


解ってる、だなんて。
そんな優しくて残酷な言葉使わないでよ。




糖分不足の恋





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