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以下にお礼の琉夏SSをひとつ。3パートで完結です。


小樽在の琉夏幼少期および琉夏母を捏造しています。
恋愛展開はありませんが、オリジナルキャラ(女)が登場します。


それでも構わないと仰せの寛容なお方のみ、どうぞお進みください。



オーラ、オーラ、プロノービス(1/3)


「ルカくんなら、あの中にいてもおかしくないね」

 元気すぎるくらいの声は、近くにいるとちょっと耳が痛くなる。

 それでも、何かと僕を気にかけてくれるリーダーは、頼れるボスっていう感じだ。

「えっ?」

「入団テスト受けてみたら?きっと通るって」

 有名な少年合唱団のコンサートに行った帰り道。

 リーダーと僕、それにリーダーのママと僕のママ、四人で車に乗ってた。

「なんで、僕が」

 コンサートの後、外に出たらもう真っ暗だ。

 流れていく夜の光に合わせて、さっきの歌声がまだ頭の中で鳴ってるみたい。

 たくさんの賛美歌の向こうに、教会や天使、雲の上の天国の光。

 きれいな古い音楽には、遠い外国のおとぎ話や妖精が住んでた。

 夢からさめないで、音楽の中に揺られてる感じが気持ちいいけど。

「ルカくんならいける。あの声に合わせて歌ってみたくない?」

 リーダーの大きな声が、夢の気分をびりびりと破いて、僕の頭にじかに入ってくる。

 窓の外を見るのをやめて振り返った。

「そんで、世界中をまわってみたくない?」

 暗い中でらんらんと光る目、にっと笑った口。

 一瞬、僕はビビッてしまう。

「ええと」

 リーダーは同い年の女の子たちとちょっと違う。

 みんな何となく目をそらして、小さな声で話すのに。

 笑う時はうつむいたり手で口を押さえたりして、もっと恥ずかしそうになるのに。

 五つも年上だからなのか、それともリーダーが特別なのか。

「へへっ、迷ってる?かーわいい」

 恥ずかしそうに笑うリーダーなんか見たことがない。

 まっすぐに僕を見て笑うと、ふわっと腕をつかまれて、知らない場所に連れてかれそうになる。

 聖歌隊は知らない場所じゃなかったけど。

 日曜礼拝の後、祭壇の前に連れて行かれた最初の日。

 リーダーのママも僕のママも、それを止めもしないで笑って見てた。

「でもルカくんが抜けたら聖歌隊、困るしなあ。かといってせっかくの才能だし」

 あの時のことはよく覚えてる。

 何だか今、すごく似てる空気だって気がする。

「僕、聖歌隊はやめないし、どこにも行きません」

 さっきまでの歌はすごく良かった。あんな風に歌えたらいいなって思う。

 でも、だからって、あの合唱団に入って一緒に歌おうなんて思わない。

「ホント?嬉しいけど、でももったいないような」

「もったいないって」

 リーダーの考えてることは、いつもナゾだ。

 それでも、たぶん、僕の為を思って言ってくれてるんだっていうのは、なぜか分かる。

 お姉ちゃんがいたら、こんな感じなのかな。

「ピカピカのボーイソプラノ。それにルカくんのルックスなら世界中にファンがつくよ」

「ファン…」

 リーダーは僕を見て笑ってる。あんまり楽しそうだから、僕はもう黙っておくことにした。

 それに僕のことでそんなに楽しそうな顔をするのは、やっぱり家族くらいだと思う。

 リーダーはお姉ちゃんじゃなかったら、小っちゃいママみたいだ。

「ねえ、おばちゃんもそう思わない?ルカくん、世界に出なきゃもったいないって」

 小っちゃいママがシートのすきまから、助手席に座ったホンモノのママに聞いてる。



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