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灰色の空の彼方




 そこは、灰色の街だった。
 立ち並ぶ高層ビルに、途切れることのない車の群れ。

「兄ちゃん」
「なんだ? ソーダ」
「どうして、みんな今在るモノだけじゃ満足できないのかな」

 ――同じような色、同じような形をした天に聳える建物群の一つの屋上から、その声は聞こえた。
 まだ幼さの残る顔立ちをした青い少年は、ぽつりと不満げな声で呟く。

「前の……前の世界じゃ、もっとみんな暢気で楽しそうに暮らしてた。でも、ここの人たちはいつも忙しそうに何かを求めてる――なんか生き急いでるみたい」

 ソーダは不思議そうな、不可解そうな顔を隠そうともせず、となりの青年を見上げ、そしてすぐにその視線を動かし眼下をせわしく移動する人々に向けた。
 少年の兄らしい青年もそれに釣られ、同じ方向へと視線を落とした。

「……この世界は、飽くなき好奇心と尽きることのない欲望があったからこそ、ここまで発展したんだ。……それが、果たしてここの住人にとって不幸なことなのかは、俺にはわからないよ」

 青年は瞳を伏せてそう言うと、少年を促して灰色のビルから共に飛び立った。

 ――青い鳥が二羽、風を切り雲を越え、甲高く美しく鳴きながら飛び去ってゆく。



「アウイン兄ちゃん」
「ん?」
「ここにも、ラピス姉ちゃんいなかったね」
「――そうだな。また、次の世界へ行くか」
「見つかるよね?」
「大丈夫、きっと見つかるよ」

 一陣の風が吹き抜けると、そこにはもう青い兄弟はいなかった。



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