FF7、クラウド×セフィロス。







「すごいな・・・正にあでやか、ってかんじ」
絨毯に直接腰を下ろして画面に見入っていた俺は、思わず感嘆の声を上げた。
手元のリモコンを操作して、一連の場面をリピートさせる。スピーカーから流れる低音質が再び室内に満ちる。

「ワインしかなかった」
背後からグラスを差し出され、視線はそのままに手探りで受け取る。無事グラスを受け取ったのを確認したセフィロスは隣に同じように直接腰を下ろした。

流れているビデオは、数年前のとある訓練の記録映像だ。一対一の実技で、双方使えるのは刀一本のみ、対峙する2人のやや後方には監督として今より少しだけ若いセフィロスその人が写っている。
さっきから俺が見入っているのは兵士同士の模擬試合ではなく、巧く剣を扱えない者にセフィロスが直接指導している場面だ。
映像の中のセフィロスは、なかなか勝負がつかず長引く試合に肩で息をし始めた両者に近づき、片方の得物を借りると、一言二言言葉を掛けて(音声が荒くてよく聞き取れない)、構えを取る。
刀身の長い刀を持つ相手に対して、セフィロスが手にしたのは刃渡り四寸程度の短剣。
周りの兵士達の視線が集める中、セフィロスは一瞬後には間合いを詰め切り相手の喉元に短剣を突きつけていた。

いくつかの型を、刃物の種類に応じた攻撃パターンを実際にやってみせるセフィロスを一通り視姦して、俺は停止ボタンを押した。
「ごちそうさま」
さっきからの半眼で真っ黒な画面を眺めながら呟く。隣りで黙々とグラスを空けては中身を注ぎ足している映像ではないセフィロスの方を横目で見遣ると、視線に気付いてセフィロスも顔を上げた。

「扱いの差だぞ。おまえにも出来るようになる」
「え?・・・ああ、そうね、剣術のはなしね、うん」
一気にワインを飲み干し喉の熱さに顔の火照りを紛らわす。


「でも、レベルが違うよ。セフィロスのはもう、綺麗だもん」
実際共同練習などで目前で教官に実演してもらうことはあるが、やはりセフィロスのそれはあでやかに見える。
綺麗もなにも、殺傷術だ。とセフィロスはすげなく言い返したが、その顔は満更ではないようだ。セフィロスはこういうことに関してやけに詳しいし拘りも実はあるのだ。
「まぁ、極めようとすると果てはないが、ある程度なら習得するのは難しいことではない」
おまえの実技を見たことがないからなんとも言えないが、とセフィロスは言うと、少し思案顔になった。

コツさえ掴めれば・・・そう言って、セフィロスは俺を立たせた。
いつの間にか空になってるワインボトルとグラスは既に脇に押しやられている。
構えを取らされ、ギュッと踵を踏みしめて一秒もしないうちにセフィロスが懐に入り込んできた。止める間もなかった。彼の手刀が喉頭の手前でぴたりと止まる。微動だに出来ない俺からセフィロスは一旦距離を取り、また懐へ。

「おまえの番だ。やってみろ」
セフィロスが言い終わる前に、俺は足を踏み出した。

瞬時に両手を封じられた。シミュレーション通りの反撃に焦ることなく、胸を突き出し体当たりすると、セフィロスが腰を引いた。手首を回して掴む腕を振り解き、両側からセフィロスの頬を挟んで唇に吸い付いた。

じゅううぅ、と音を立てて吸い続ける間もとっくに頚動脈前に待機していた彼の尖った指先が触れたり離れたりするのを感じていた。やがて諦めたように形を緩めた十本の指が俺の首筋を上から下へ撫でていく。
すぽんっと放した唇はただ吸い上げられていたせいで赤くなってタコみたいに見えてちょっと笑えた。セフィロスは痺れた唇を僅かに開いて笑った。脇の下から腕を入れて肩をホールドし、お互いのうなじの毛を掻き乱した。

一緒になってくすくす笑っていたクラウドに、一瞬現実に帰ったセフィロスが苦々しい教官の顔に戻って上から睨みつける。
「負けを認めたな」
クラウドを軽く突き飛ばして空々しく言う。呟きは冷たかったが俺には拗ねているように見えた。
正攻法で勝てるとは思っていないので惚れた弱みにつけこんだことは確かに認める。しかし折角の休日にまで真面目に訓練などする気にならないし、セフィロスだって俺と向かい合ったとき、本気だったかと問われれば言葉に詰まるだろうからある意味お互い様である。

「これじゃ練習にならん」
「いいからイチャイチャするぞ」

よし、こい! 腕を広げると、今度はぎこちなく擦り寄ってきた。





end.



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