私は猫。名は生良。
とある噂が聞けたので、今日はその噂の元へ遊びに行ってみようかと思う。
それがデマであれ、真実であれ、楽しみだ。
私はたっぷり水を飲んで、とんだ。






人形ってのは、たぶんイメージよりもずっと繊細でこの砂漠の中で使ったらすぐにメンテナンスをしてやらねぇとすぐに動きが悪くなる。 下手をするとそのまま壊れちまう。
カラスを分解し、関節部分を見ると案の定、たっぷりと砂埃がつまっていた。
つい三日前にメンテナンスをしたばっかりだっていうのに、思わずため息をつきたくなってしまうのをおさえて作業にとりかかった。
作業は単純なものなので、考え事をしながら手を動かす。
主に考えるのは、どうしたらもっと強く、手間がかからない人形を作れるかとか、おっそろしい弟の対策とか、口うるさい長女に対しての不満とか。


『たのもう。 ここに有名な人形師がいるときいたのだが』
「――あ?」

声がして、振り向いてもそこには誰もいない。
気のせいか、と作業に戻ろうとするとまた声がした。
――いや、声というにはあまりも、空気の動きが感じられない。
いやな方向に想像をしてしまうのをなんとかおさえ、もう一度ゆっくりと振り返った。


「のわっ!?」
『にょ?』


そこには猫がいた。
黒かったので薄暗い室内では見つけにくかったのか、びっくりして声あげちまったじゃん。
ったく、おどろかせるなっつーの。


『お主が有能な人形師か? ずいぶんと子供のようだが・・・。 まぁいい。 ちと私の遊び相手を作ってくれんか?』
「い、いや。 俺は人形を扱うけど作ったりはしねぇし。 他のヤツじゃん?」
『はて、まだ未来のことか・・・。 なぜ作らんのだ?』


いや、なぜって言われても・・・ってかこの猫普通にしゃべってる!?
俺、何気に混乱してんじゃん!?


『ふむ、では、時はかかってもよいからとりあえず私の遊び相手を作ってくれ。 報酬は適当に』


といって猫は無茶な人形のスペックを言い残して消えてしまった。
(なんだそりゃ!? デコピンで一般人殺せるぞ!? 無理があるじゃん!?)










どうやら噂はまだ先の話だったようで、彼はまだひよっこのようだった。
が、将来きっといい人形を作ってくれるだろう。
そのときのオモチャで楽しめるのが、今から楽しみだ。
私は猫、名は生良。
今からオモチャの出来が楽しみな、少し気が早い猫だ。



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