拍手くださりありがとうございます!



以下は、当サイトSERIES「1/3の純情な感情」のおまけで、女の子スザクとルルーシュのお話になります。







アフターエピソード:1





ルルーシュはまだ涙を流すスザクの腕を引いて歩いていた。

スザクの家は病院だ。まだ家の明かりが点いていないということは、仕事が長引いているのだろう。

「…そういえば、お前、体調は大丈夫なのか?」

ルルーシュはふと、気になって聞いてみた。

「まだ少し、お腹が痛い」

「じゃあ先に家で風呂に入ってから帰れ」

ロロが先に帰っているなら、恐らく海水に浸かったルルーシュの為に入浴の準備を整えてくれている筈だ。

「ロロには感謝しなきゃ」

やっと笑みを取り戻したスザクに安心しながらもルルーシュは苦虫を噛み潰した顔をした。

スザクにたいする当て馬のような扱いをしてしまった(本人は気付いていないようだが)。負い目はあるが、いくらなんでも海に落とすのはやりすぎだ。体調を悪くしているスザクを巻き込んだのは許しがたい気がしている。

スザクにもそう言ったが、スザクは寛容にも僕は別に気にしてないよ、と含み笑うだけだった。

ともあれ、家に着き、扉を開けた。

「お帰りなさい、兄さん!」

ぱたぱたとロロがかけて来たが、スザクの顔を見て、ひくりと頬を震わせた。

「…スザクさんもお帰りなさい」

「ただいま、ロロ」

にこりと、不自然なまでにスザクが笑う。

そこに、咲世子の足音が被った。だが、スザクは知らぬフリで言葉を繋ぐ。

「君のおかげで僕たち、無事に結ばれたから」

ぱた、と咲世子の足音が止まる。

ルルーシュは「ばか!」とスザクの口を塞いだ。

ロロは引き攣った笑みを浮かべている。

スザクは未だ不自然なまでの満面の笑みを浮かべていた。

咲世子は時が止まったような三人を順繰りに見て、スザクとルルーシュの服装に目を止めた。

「今夜はお赤飯にするべきでしたか?」

「は?」

スザクに目を止めた咲世子の視線を追って、ルルーシュは更に動きを止めた。大腿に伝う一筋の―――見ようによっては誤解を招きそうな―――

「ほあぁぁ!?」

「咲世子さん!早合点しすぎです!スザクさんのそれはただの、」

「いやぁルルーシュが激しくて」

「それはそれは」

「スザクさんは黙ってください!兄さんがそんな事する訳ないでしょう?こんな野蛮な人に!兄さんも固まってないで何とか言いなよ!」

「…お兄様?スザクさんがどうかされたんですか?」

「な、ナナリー!」

「久しぶりだねナナリー、元気にしてた?」

「はい!ロロお兄様が、スザクさんとお兄様が海で遊んでいるとおっしゃって、私も久し振りにご一緒したかったのですが、お二人が仲直りしてくださったみたいで嬉しいです…お兄様?」

「な、なんだいナナリー?」

「仲直り、なさったんですよね?」

「勿論だよナナリー」

口ごもるルルーシュの代わりにスザクが返事をする。

「良かった」

瞼の閉じた目で、ナナリーはほっとしたように微笑んだ。そして、

「あら?血の匂い?お怪我をなされたんですか?」

「いいいいや、違うんだナナリー、これはその、」

「兄さん、早くスザクさんをバスルームに案内してあげなよ!咲世子さんはナナリーを連れていって」

「はい」

「ほら、スザクさんは一階、兄さんは二階で」

ランペルージ家には、一階の浴室とは別に、二階の客間にバスルームが敷設されている。…役に立ったのは、初めてかも知れなかったが。





ルルーシュとスザクをバスルームに詰め込むロロの声が遠ざかって、ナナリーが車椅子を押す咲世子に確認をとるように尋ねた。

「咲世子さん」

「なんですか、ナナリー様?」

「私、明日からスザクさんをおねえさまとお呼びした方が良いのかしら…」

少し淋しげに白い面の細い眉を下げたナナリーに、咲世子は柔らかく笑いながら、穏やかな声で不安を拭うように言った。

「それにはまだもう少し、時間がたりないようですよ」



「そう、ですか」

憂いが晴れたようなナナリーの様子に、咲世子は慈しみに満ちた眼差しをむけ、はい、ともう一度頷いた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――



20080811





→翌日の話に続きます…






ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。