今から君に何を話そうかと。 思案することが、私の幸せ。 「今日はおでんを食べたのですよ」 私の愛するタンパク質の塊は、椅子に座って俯いていた。 「コンビニの結び白滝は悪くない。あなたにも食べさせてあげたかったですね」 実際原材料なんて分かりもしないものを、なぜ疑いもなく食べるのか。 彼女は何も言わない。疲れてしまったのだろうか、それとも寝ているのだろうか。 私が座っている椅子よりよほど豪華な椅子だというのに。少し羨ましい。 「けど金銭的な余裕がないからなあ。空腹ほど怖いものはないですよねぇ」 ほう、と溜め息をついた。 何日も風呂に入っていないからか、髪はどこか脂っこい。 「……あのー、恵美子さーん」 あんまり反応しないものだから、顔を覗きこんでみる。 と、その頭がごろりと落ちた。 くるりとした美しい目が、部屋の向こうまで転がっていく。 「ありゃ」 呟き、慌てて頭を追いかけた。 目もきちんと填めこんで、再び美しい彼女を創る。 「危ない危ない。勝手にどこか行かないでくださいよ、もう」 やや憤慨して頭を振るが、すぐまた話し始めた。 「それで、えーと。そうそう、今日おでんを食べたのですがね」 この胸の内を渦巻くなんともいえない感情を、私が彼女に伝えるのにはきっと途方もない時間が必要なのだ。 らせん 拍手ありがとうございました! |
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